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平成21年12月号



フィッシュ オードブル サラダ




12月ともなれば、もうすぐクリスマス。そして師走、正月へと、いよいよ今年も1年の締め括りの時期に入った。

今年のクリスマスイブの夜は、誰とどのようにして過ごすのか、独身の者は色々と気になるところであろう。

1人寂しい夜になるのか、それとも誰かと一緒楽しく騒ぐのか・・・。

楽しく騒ぐとなれば「クリスマスパーティ」ということになるのだろうが、巻頭の写真、これはパーティ用の「サラダ」である。

それも魚をふんだんに使ったフィッシュオードブルのサラダである。

写真では質的なものをもう一つよく確認出来ないかもしれないが、中身は生食出来る刺身レベルの魚であったり、ボイルしてそのまま食べられる魚ばかりが盛り付けられている。

具体的には、スモークサーモン、醤油漬けイクラ、ズワイ爪、ボイル有頭エビ、甘エビ、本マグロ中トロ、ベビーホタテ貝、ウナギ蒲焼、生サーモン、ボイルタラバガニ、などである。

これらは、レタス、オニオンスライス、大根けん、人参けんなどを混ぜ合わせた、タップリ山盛りのベース野菜の上に盛り付けられている。上からは細切りした赤や黄のパプリカ、水菜、貝割れ等をトッピングし、更にキュウリやレモンのスライスを適度に配置している。

中身をわざわざ説明したのは、トッピングが少し過剰となったようなので、中身がもう一つ確認出来ないのではないかと思ったからだ。

自分としては、今どきの「クリスマスパーティ」には、こういうものが最適だと考えていたのだが、必ずしもそのように受け止めてもらえたわけではなく、言わば「ボツ」となって、日の目を見なかった商品である。



 

いっぽうこれは、一人から二人用の「フィッシュサラダ」である。

このサラダの中身は刺身の切り出しなど、切り刻まれて大きさが不揃いの魚が中に色々と入っている。

野菜はレタスとオニオンスライス、それに赤と黄のスライスパプリカ、それに貝割れ。

黄色い物体は、だし巻き玉子のサイコロで、これが程よい甘さを加えている。

店頭ではこういう傾向のフィッシュサラダは、売価とボリュームのバランスさえ良ければ確実に売れている。

だからクリスマスのオードブルも、フィッシュサラダ風にすれば、特に女性の感性にピッタリとくるのではないかと考えたのだが、予想外の伏兵が待ち受けていた。

その伏兵とは、トッピングなどあまりにも適度な作業工程が多いために、これを作業マニュアル化するのは難しいからダメだという判断が出てしまったのだ。


この写真は2005年の秋に、ロサンゼルスのハリウッドにある、コダックシアターの近くのレストランで注文したサラダであるが、写真の中の手の大きさと比較してもらえば皿の大きさを想像してもらえると思うが、この皿に盛られたサラダが、何と一人分と聞いて驚いてしまったのだ。

当然ながら二人で「シェアー」ということになったのだけれども、アメリカ人の迫力ある食欲に驚いたという経験がある。

巻頭のフィッシュオードブルサラダは、日本では4〜5人分を想定しているのだが、アメリカでは写真のようなボリュームのサラダが普通なのだから、まさか巻頭写真のサラダを一人分とすることはないと思うのだけれども、二人で平らげるというのは、有り得ないことではないと思う。

考えてみれば、日本におけるサラダというのは、ボリュームの割りには価格が高過ぎる傾向にあるようで、コストパフォーマンスはあまり良くないと感じる。

特に魚を使ったフィッシュサラダというのはミートに比べると割高だ。

販売を前提としたフィッシュサラダを作る時、もう少し魚の原価が安ければ、もっとこんな風にすることができるのに・・・、と感じながら、結局は貧相な中身としてしまうことが多々あるのである。

最近日本のデフレ現象を心配する声も聞かれるようになったけれども、日本の魚の産地では「魚価安」の悩みが声高に叫ばれている一方、その反対に消費地における一部の魚については、軌道修正としての「魚価安」も仕方ないと感じる高い魚もある。

サラダに使用する魚の原価が安ければ、例えばアメリカのサラダのように、牛馬並みのボリュームをたっぷりと盛り付けることが出来るのだが、今の日本ではコスト面からこれが難しいので、少しだけ工夫が必要となる。


このサラダは、コスト面で少し工夫を凝らしたものなのだが、上記写真のアメリカのサラダと似たような傾向を感じてもらえるだろうか。

もちろんボリュームは段違いなので比べ物にはならないけれども、真似した訳ではないのに、図らずも結果として共通していることがあるのだ。

そう・・・、それは「サイコロ状のカット」ということだ。

この方法のメリットは、元の姿が多少歪で、不揃いであっても、サイコロ状に「規格化」が出来ることである。

日本のように僅かな引掻き傷や、小さな凹みも許さない基準があると、その基準に合格した商品というのは、結果として非常に割高になる傾向がある。

これが日本の諸物価を世界基準からすると割高なものにしている要因の一つだ。

このような重箱の隅を突っつくようなオーバースペック的傾向を逆手にとって、表立ってではなく、ネットの中で流行っているのが、いわゆる「訳あり商品」という一連の商品である。

そこまで徹底した品質でなくても良いのに・・・、という気持ちを、本当は日本人も潜在的に持っている証拠であろう。

この潜在的ニーズが、ネットのヒット商品としての「訳あり商品」を、売り切れ続出という現象をつくっているのかもしれない。

つまり、割高なハイスペックの材料を使うよりも、訳ありに近い材料や、形の歪な部位を使用することで、商品原価を引き下げることが可能となるのである。

更に、これらをサイコロ状の規格に統一すれば、見た目の価値感も、あまり損なわれないということである。

現在の日本において、フィッシュサラダという商品は、しっかりと根付いているとは、とても言えない現状にあるけれども、昨今の「魚離れ」という現象を踏まえると、魚の食べ方としてもっと「魚のサラダ風の料理」を拡大すべきと思うのだが、コスト面の重荷が課題となって「売れる商品」とはなっていないと感じている。

日本における「魚の将来的な消費の姿」というものを考える時、骨付きの塩焼きや姿煮という類いは、たぶん成長を望めるものではないと思うが、いっぽうで「刺身や鮨」という分野は、骨などの不可食部分がないということから、面倒臭がり屋の現代人にも受入れられており、将来的にまだ大きな成長の可能性が残っていると考えられる。

こういう面倒臭くない「簡便性志向」という点では、同じように「サラダ」というのは、刺身や鮨と同様の傾向がある。

つまり、フィッシュサラダというのは、現時点では「高いコスト」という面から売れ行きは芳しくないが、コストパフォーマンスを成り立たせる手法を確立しさえすれば、刺身や鮨並みの売上げが期待出来る商品となり得ると考えられるのである。

今後しっかりと研究を重ね、何か爆発点となるきっかけさえ掴めば、フィッシュサラダはヒット商品に豹変する可能性がないことはないだろう。

クリスマスパーティに招待されたならば、あまりワインに酔っぱらわず、どんなオードブルやサラダが出されているのか、冷めた目で、じっくりと観察してほしいものだ・・・。



更新日時 2009年 12月 1日 (火)


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