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The Fish Food Laboratory Inc.


平成24年 10月号 No.106



秋太郎平造り

 

 


秋太郎という、いかにも秋を感じさせる直截的な表現の魚がいる。

上の平造りは赤に近いオレンジ色で、まるでマグロのように見えるかもしれないが、通称はカジキマグロ、正式に言えばマグロではなく、バショウカジキである。

それが下の画像の魚である。

バショウカジキと呼ばれる、スズキ目カジキ亜目マカジキ科バショウカジキ属の魚は、サンマやサバのように、店頭でその姿を普通に見ることは出来ず、基本的にはこの画像のように魚市場などでしか見ることが出来ない。

一般的には「カジキマグロ」という総称でマグロの一種みたいな扱いを受けているが、以下の概略体系図のように、実はマグロの仲間なんかではないのだ。

この体系図は学術的なものではなく、水産物として便宜的な名称による簡略版である。




このように5種類のカジキの仲間がいる。

カジキ類の特徴
クロカジキ
第一背ビレが小さく、マカジキよりも大柄で4メートル以上にもなる。市場ではクロカワと呼ばれ、マカジキ、シロカジキに次ぐ価格で取引されるのが普通で、刺身でも美味しい。
マカジキ

マカジキ科の代表であり、メカジキとは別の科に属する。市場ではマカと呼ばれ、その特徴は第一背ビレが尖っていて体高とほぼ同じであり、後ろに行くに従って段々と低くなり、しかもつながっていて倒すことが出来る。大きさは4b以下の100s止まりで、メカジキよりも小柄である。身質は鮮やかな朱色で色変わりが遅く、その淡泊な味はカジキ類の中で最高とされ、最も高い価格で取引される。

バショウカジキ
カジキ類の中ではもっとも小型で、その特徴は何と言っても船の帆のような大きな背ビレである。また腹ビレが細長く、肛門の近くまで伸びている。カジキ類の中では最も沿岸近くを好み、定置網にかかって獲れることもある。色はオレンジ色で色変わりは少ないが、味は淡白なので市場での取引価格はカジキ類の中で最も低い。
シロカジキ
市場ではシロカワと呼ばれ、マカジキに次ぐ価格で取引される。見た目ではどこがどういう風に白いのか解らない。というよりも、表面は特に白いわけではないので、色では見分けられず、その特徴は胸ビレにある。胸ビレが魚体から垂直に立っていて、これを魚体にくっつけられなくなっているのが特徴である。大きさはほぼクロカジキと同じ大きさになるので、クロカジキがいるからシロカジキと名付けられたような出所不明の「白」カジキである。
メカジキ
他のカジキ類とは違って、このメカジキだけは別の科に属しているが、最もカジキらしいカジキだ。全長は4b以上になり、カジキ類の一大特徴となっている吻、つまり槍のように尖った鼻先は一番長さが目立ち、平たく角状である。胸ビレは腹ビレと見誤ってしまうように極端なかたちで腹側にあり、その影響で腹ビレは退化してなくなっている。

カジキ類を市場での取引価格面で比較してみると、秋太郎と呼ばれるバショウカジキは、カジキ類の中での評価は一番低くなっている。

しかし、この評価というのは冷凍などの均一条件を前提とするものであり、バショウカジキは沿岸部の近海で獲れる可能性が一番高く、いわゆる「鮮魚感覚」での鮮度感をアピールできる点などは特に考慮されていない。

しかもバショウカジキは、秋の時期に脂が乗って美味しくなるという季節感もあり、「旬」を強く打ち出せるのもこの魚の特徴となっている。


例えばこれは今年9月初旬の鹿児島県に所在する、あるスーパーの魚売場であるが、まさに秋太郎が「秋の旬」であることを強く打ち出した販売方法である。

尖った槍のような鼻先をつけた頭部と、帆船の帆のような背ビレを飾って演出し、その手前で平造りの刺身と、腹部を塩麹につけたソテー用切身にして販売している。


塩麹タレ漬けのソテー用切身については、筆者が食品商業10月号の中に記している文章の中でも紹介しているが、

この商品のポイントは、刺身などにすると蛇腹のように形が崩れて使い難い腹部を、大きいブロックにして、そのままソテー用切身として使うことである。

料理をする時にその振動によって、多少は身離れの現象が見られるものの、熱の力で形は崩れにくくなり、腹部のために脂も多く、柔らかく味わえる。

この他、鮮度の良いカジキはにぎりにも使えるのだが、江戸前寿司ではカジキ類は絶対に使わないことを誇りにしているということで、それがどういう理由からそういうことになったのか根拠は不明である。

江戸前寿司ではなく「魚屋鮨」であれば、そんな意味不明の拘りに縛られることなく、自由にカジキを使ってにぎったら良いのではないかと思う。

例えば、以下の画像である。

これは食品商業10月号の中に掲載されている写真の画像と同じものなのだが、バショウカジキの「大トロ」にあたる部分を炙りにしてにぎったものだ。

この部位はもちろん一番脂が乗っているが、本マグロとは比べられるものではない。

また筋肉の締まりが悪いので、生のまま包丁を当てるとバラバラになってしまう。

そこで、これを冊状のまま炙りにすることで、表面を固めてから鮨種に切るのである。

表面のタンパク質が熱で固まり、カチッとした状態になり包丁が入れやすくなる。

「蛇腹」と呼ばれるこの部位は、普通は使い勝手が悪く誰も好んで扱いたがらないので、まさに捨て値の扱いであり、炙りのにぎりなんて誰も食べたことがないはずである。


蛇腹状の腹部ではない他の部位は、巻頭画像のように平造りの刺身にするか、又は以下のように2切れと3切れ入りの切身などにすることが多い。

 

切身としては「骨無し皮無し」なので、今の時代の流れにも合っているはずで、しっかりと料理提案をすれば、マグロ類にも劣らない商品となるはずである。

最後に、特に珍しくはない簡単なカジキ料理の一つを紹介して終わりにしよう。

(魚はバショウカジキではなくマカジキ)


 

イタリアンステーキ カジキヤーノ
1.150cから200gカットの大きさの切身を用意する。 2.真ん中から観音開きにする。 3.開いた面に軽く塩コショウする。
4.ケチャップをぬり、粉チーズをふりかける。 5.中身が出ないように閉じる。 6.閉じ終わった両面にパプリカを振る。
7.小麦粉を両面にまぶす。 8.熱したフライパンにサラダ油を入れ、時々フライパンを揺すりながら切身を焼く。 9.バターを入れて味をなじませ、仕上げにワインをふりかけ、味を引き締める。

 


時間に余裕のある方は、お遊びで「カジキマグロの歌」でも聴いてみては・・

そして、もっと時間が有り余っている方は、ついでにこちらも覗いてね・・・

沖縄カジキマグロ238kg 3時間死闘トローリング2011年 9/7


更新日時 平成24年10月 1日


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