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平成24年 1月号 No.97



マグロづくし鮨盛合わせ


日本の正月料理と言えば「おせち」が、一般的には常識というものであろう。

しかし最近はそれが必ずしも常識ではなくなりつつある側面もあるようだ。

「おせち」は煮たり焼いたり、砂糖や醤油を絡めたりして、一定期間保存するための工夫を施した料理なので、イザ食べるという時は必ずしも出来たてのホヤホヤという訳ではない。

それは家庭内で調理した「おせち」の場合はまだしもだけれども、店であらかじめセットされた「購入するおせち」については、何よりも腐敗しないことを最優先されることから、どうしても保存のための加工度は嫌が上にも高まることになるのである。


そのような手を加えられた「おせち」という名の「ご馳走」が、今やそれほど歓迎されなくなってきているという傾向があるようなのだ。

その要因の一つとしては「作り置きの冷めた料理」ということにもあるようで、喩え正月という時でさえも、今や「作りたて」は求められるようになっている。

作りたてというのは「ホットな温かい料理」というだけではなく、切り立ての刺身や、にぎり立ての鮨などの「鮮度感」あふれる料理にも及び、特に最近人気が高まってきている「正月の鮨」がその筆頭に挙げられるであろう。


例えば下の鮨盛合わせなどは、正月の卓上にはピッタリであろう。

4人家族が、10種類のネタを1カンずつ食べるにはピッタリではあるが、中にはこの豪華な内容でも不満を感じる人が出てくることが考えられる。

何故ならば、好みではないものには手をつけなくても、大好きなネタは1切れではなく、もっとたくさん食べたいのが人情だからだ。


例えば代表的なネタでいけば「マグロのトロ」などはその最右翼になるはずで、もし家族の子供がトロを大好きということになれば、たぶんお母さんは我慢して、自分の分を我が子にあげる事になる。

つまり、母はトロを食べたくても食べられない犠牲者となってしまうのだ。

鮨盛合わせの配分バランスというのは、内容と数量指定の注文分でもない限り、お客様のニーズを全て汲み取ることは出来ないのだから、結局製造工程の都合を含めて、至極無難な線に落ち着くことになる。

このようにネタの無難な配分バランスから起こり得る潜在的な不満というのを、別の角度から根本的に解消しようと試みてみたのが、巻頭写真の「マグロづくし鮨盛合わせ」だ。


何と言っても「マグロの鮨」というのは、日本で人気bPの存在である。

特にトロともなると、まさにダントツの人気ではあるのだが、ご存じのようにそれは誰でも簡単に手が出せるものではない位置づけだ。

でも、たった一つしか食べられないのでは、あまりに物足りない・・・。

出来ればトロだけは、もう少し満足のいく量を食べたい・・・。

そんな隠れたニーズに応えるのが「マグロづくし盛合わせ」である。

しかし、中トロも入って20カンであれば3,000円位は覚悟しなければならない。

そんなに量もいらないし、高すぎるという人にはこれだったらどうだろう。

このボリュームならば、トロが入っても1,000円弱で手に入るはずだ。

でも「これではトロが物足りない・・・」ということなら、中トロ入りで、8カン1,500円でどうだ!・・・。


ところでこれらの鮨写真の「にぎり」は天然本マグロを使っているが、平成23年の日本における刺身向けマグロ供給量は275千トンとなった模様で、平成19年より106千トン減ったとの予測をまぐろ需給協議会は発表している。

12月はマグロの資源減少と漁獲制限の高まりで築地市場への入荷が減り、卸価格は前年より1〜2割上昇し、本マグロの店頭価格も上昇したことで消費低迷し、特に高い本マグロの天然物は高値で敬遠の動きがでているということだ。


こうなると頼りにしたくなるのは養殖マグロである。

2011年の国内養殖クロマグロ出荷量は主要12社で4,300トンとの予測だが、実は水産庁が2010年から養殖マグロに関する情報取得を始めているけれども、日本の養殖マグロに関する正確な統計は、今のところまだないということなのだ。

世界情報レベルのFAO(国際連合食料農業機関)のマグロ養殖統計には、日本のマグロ養殖生産量は含まれていないということである。


現在日本の養殖マグロは、以下の場所で養殖されている。

これらのマグロ養殖場はほとんどの種苗確保を天然資源に大きく依存しており、体長が20〜30a、体重は100〜500cほどの本マグロ幼魚であるヨコワを、大きく育てるための種苗として、上の図の青い色の海域で捕獲している。

しかしこのヨコワの捕獲そのものが「本マグロの天然資源を枯渇させる原因」という意見もあって、この方法は必ずしも歓迎されている方法ではない現実もある。

いっぽう2002年に近畿大学は、人工孵化したマグロの卵を孵化させる事に成功し、世界で初めてマグロの生活史のサイクルを人工的に完成させる完全養殖に成功した。

下の図がその本マグロの完全養殖サイクルのイメージ図である。


その近畿大学のマグロ養殖場に昨年行く機会があったので少しだけ紹介をしよう。

その日は近畿大学水産養殖種苗センターの宮武さんに案内していただいて、舟に乗せてもらって奄美大島でのマグロ養殖の様子を詳しく説明していただいた。

       

生け簀に案内してもらった餌を撒く舟  直径30bの巨大なマグロ専用生け簀

 

         

冷凍サバを生餌としてマグロに与える  マグロはガツガツせずに餌を食べる

 

研究が進む非公開の実験棟

 

実験棟は外部には非公開ということで中は見せていただけなかったが、中ではマグロだけではなく、色々な魚が養殖の可能性を実験されているとのことで、これから先その成果が日の目を見ることになっていくのは楽しみなことである。


近大産養殖マグロについては、既に幣紙平成19年10月号で紹介していたので、少し古いけれど興味のある方はこちらを参考にしてほしい。

いっぽう、これらの近大産養殖マグロを扱っているのは(株)アーマリン近大という近畿大学水産研究所の別会社であり、そこが養殖した魚を外部に販売する窓口となっている。

販売に興味のある方はアーマリン近大のホームページを覗いて連絡してほしい。


まだ記憶に新しいのが、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)において、大西洋のクロマグロが鯨と同じように危うく捕獲禁止になりそうになったが、結局持続可能なレベルへの削減というところに落ち着いたということがあった。

「天然物」のマグロが豊富にあるという時代は既に過去のもののようで、これからは「養殖物」に頼らざるを得ない時代になろうとしているのかもしれない。

今年はその辺にも注目していきたいものである。


更新日時 平成24年 1月 1日


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